代表作『君の膵臓をたべたい』で知られる住野よるさんの作品。
爽やか度強めのよくある青春小説かと思いきや、読むほどに深くあたたかくなる作品なんです。
物語が進むにつれて登場人物たちへの愛おしさが増し、わくわくしながらページをめくっていた自分がいます。
住野先生の作品って、情景が目に浮かびますよね。
まるで自分も物語の中にいるような。
教室、グラウンド、図書館、それぞれのシーンや、テスト期間、放課後、雨の日、など時間帯や気候の表現、その時の景色からくる感情たちが、主張していないのにスッと心に触れる感じ。伝わります?・・・伝われ!
本作もまた、皆さんを学生時代に連れて行ってくれるような作品です。
『かくしごと(住野よる)』 あらすじ
みんなには隠している、少しだけ特別な力を持った高校生 5人。別に何の役にも立たないけれど、そのせいで、クラスメイトのあの子のことが気になって仕方ない──。彼女がシャンプーを変えたのはなぜ? 彼が持っていた“恋の鈴”は誰のもの? それぞれの「かくしごと」が照らし出す、お互いへのもどかしい想い。甘酸っぱくも爽やかな男女 5人の日常を鮮やかに切り取った、共感必至の青春小説。
出版書籍データベースより
『かくしごと(住野よる)』第1章 京のかくしごと
この章の主人公は京。
冴えない感じの内気な男子高生。
京は人の感情が「、」「。」「!」「?」の記号となって頭に浮かんで見える、というかくしごとを持っています。
好きな子に声をかけられて1日頑張れそうと思ったり、好きな子のシャンプーの香りが変わったことが気になって仕方ないってなんだか可愛らしいですよね。
シャンプーの香りに一喜一憂する京とまわりの友人との関わりを中心に話が展開されます。
こういう力を持ったがゆえに、気になる人の感情の機微にますます敏感になってしまう京。
京の気持ちがジェットコースターで読んでいて楽しいです。
この章で主要キャラクターたちが出揃うわけなのだけれど、
自分に自信が持てない内気な京
前向きハッピー人間クラスの人気者のミッキー
パッパラパーと思いきや実は策士なパラ
クラスに1人はいる王子様系のヅカ
心優しい繊細ガールのエル
このように、ざっくりと性格が分かる感じ。
内に秘めた感情や、青春時代ならではの各々が抱える葛藤、変化する心模様を知るのはまだ先のお話。
ここまでは、正直、シャンプーそんなに大事?
なんだかあっさりしすぎてない?
よくある青春小説?・・・って思ってました。
ごめんなさい。
もっとこう、なんというか、深さが欲しくて。
でも読み進めるうちにどんどん住野よるワールドにのめり込んでいきました。
深い深い沼です。
読むの辞めなくてよかった〜。
もし!もしも!私のようにこの章で物足りなさを感じてしまう方がいたとしたら、絶対に途中で読むのを辞めないでくださいね!!
『かくしごと(住野よる)』第2章 ミッキーのかくしごと
この章の主人公はミッキー。
ヒロインよりもヒーローになりたい女子高生。
ミッキーは人の感情がまるでシーソーのようにプラス・マイナスに動くバーが見える、というかくしごとを持っています。
大抵の人は同じ動きをするけれど、クラスにいる3人は他とは違った動きをするみたい。
ヒーローになりたい、という時点で、ちょっと変わっている感は伝わるけど、それだけ正義感が強くて、友達思いな部分もあって。
愛の重さでシーソーのバーをプラスに変えちゃえばいい!なんていう人間関係で悩むことを知らない女の子。
悩みといえば、進路のことくらい。
羨ましい限りですね。いや、もちろん進路も大切な悩みだけれども!
そんな前向きハッピー人間なミッキーが、学園祭でヒーローショーのヒーロー役を演じることになり、放課後の練習から当日に向けて物語が進みます。
迎えた本番、もう1人ヒーローが・・・?
「これはそういうお話。」
『かくしごと(住野よる)』第3章 パラのかくしごと
この章の主人公はパラ。
あだ名の由来でもあるパッパラパー、と思いきや、
冷静に自分を見つめることが癖で、外向きの自分を演じてしまいがちな策士だったりする。
パラは人の心が「1・2・3・4」と鼓動を刻むのが見える、というかくしごとを持っています。
鼓動の速度から気分の高まりなどを感じとります。
他の登場人物と異なり自分自身にも対応した能力です。
修学旅行中に鈴を渡すジンクスをめぐり、各々の思いが交錯する修学旅行期間が描かれた章となっています。
彼が持っていた鈴は誰からもらったもの?
気になる彼女に鈴を渡すことはできるのか?!
修学旅行という非日常イベントにドキドキわくわくしちゃいます。
パラと王子様の探り合いつつ本音が垣間見えるトークにも注目!
『かくしごと(住野よる)』第4章 ヅカのかくしごと
この章の主人公はヅカ。
クラスに1人はいるであろう王子様系。
ヅカは人の喜怒哀楽が「♠︎」「♢」「♣︎」「♡」のマークとなって見える、というかくしごとを持っています。
相手の気持ちが見えちゃうからこそ、すごく気をつかっちゃうし、相手の気持ちを優先するヅカ。
いつもならマークの理由を確かにして、相手のために解決してあげるところですが、自分の気持ちを優先したくなる状況が出てきた模様。
そんな中、いつものメンバーでお花見へ行くことに。
お花見に向けてミッキーが作ったクッキーはエルのレシピだったのですが、実は意図的に欠けている材料があるらしく・・・。
どうか楽しいお花見になってくれ!とドキドキしながら読みました。
誰とでも器用に仲良くできるヅカがメインの章だけあって、5人の距離感や感情が変化していく様子がよく見えます。
章の最後に明かされる過去の内緒話には衝撃を受けつつ、「やっぱりね」とも思ったりしました。
これまでのページを読み返したくなるはず。
『かくしごと(住野よる)』第5章 エルのかくしごと
この章の主人公はエル。
心優しい繊細ガール。
エルは人の恋心が「矢印」となって見える、というかくしごとを持っています。
内気なエルは私なんかがこんな能力(かくしごと)を持っていても、と感じていますが、その能力が役に立つ場面を迎えます。
それはみんなでタイムカプセルに入れることになったお互いへの手紙を書くことに関連します。
受験生となった5人は、タイムカプセルにお互いへの手紙を入れることを計画しました。
エルの手紙には長い時間を共に過ごしてきた4人との友情の深まりがよく表れていて、手紙っていいなぁ、って思ったり。
京宛の手紙に隠された「かくしごと」に気づいたときはハッとさせられました。
物語の最終章でもあるこの章、今まで見守ってきた5人のハッピーエンドを信じていた私からすると、途中あらぬ方向に向かい出すのでヒヤヒヤしちゃいました。
読み切った後には、ホッとした気持ちになって、きっとこの5人の未来がますます楽しみになりますよ。
『かくしごと(住野よる)』 か「」く「」し「頁
本編を読み終わった方には、ほっこりした気持ちのまま訪れてほしい場所があります。
それは、こちらのサイト👇
クイズに答えると、5人の幕間のスペシャルストーリーが読めますよ。
これがまた、ショートストーリーなのにインパクト大でして。
本編を読みきって5人に愛情が湧いている読者には是非とも読んでいただきたい!
もちろん5人分!!!
個人的には「エル」のストーリーが一推しです。
か「」く「」し「」ご「」と「 感想
みなさんはこの物語の中にいる自分が見つかりましたか?
住野先生の作品って、サラッと読めちゃうけど、実は深くて。
読み返すほどに散りばめられたパーツを集めていける、そんな作品な気がします。
そのパーツの答え合わせのために、この作品を読んだことがある人と語り合いたくなりました。
今回、「かくしごと」がテーマですが、5章のエルのパートで京宛の手紙に「各仕事」の文字があり、あぁ!『かくしごと!』・・・『各仕事!!!』ってなりました。
自分では持っていてなんとも思っていなかったり、もはや役に立たないとも感じていたりすることでも、他の誰かのために、何かあったときのために、神様から与えられている各々の仕事(役割)だという表現。
うまい、うまいんだよなぁ。
私自身はこの5人のような特別な能力は持ち合わせていないけれど、きっと私にも「各仕事」は与えられているはずで、誰かの役に立てていたら嬉しいな。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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